この記事は、公務員として働く方やこれから公務員を目指す方、公務員の家族やパートナーの方に向けて書かれています。
僕は元公務員の経験が8年あります。そんな僕が法律上の話と経験談を交えながら
有給休暇の現実や消化率、取得のコツ、退職時の注意点などを、最新の情報とともにわかりやすく解説します。
民間企業との違いや、法律・制度のポイントも押さえ、安心して有給を取得するための具体的な方法まで網羅しています。
公務員の有給休暇に関する疑問や不安を解消し、納得して休暇を活用できるようサポートする記事です。
この記事でわかること
・公務員の有給についての仕組みについて
・有給休暇は消化できるのか
・民間と比較した有給事情について
公務員の有給消化の現実と悩み:なぜ“全部消化”が難しいのか
公務員は安定した職業というイメージがありますが、有給休暇をすべて消化できている人は意外と少ないのが現実です。
「有給は権利」とわかっていても、実際には職場の雰囲気や業務量、上司の理解度などさまざまな要因で、全日数を使い切るのが難しいケースが多く見られます。
特に年度末や繁忙期、退職時などは「本当に全部消化できるの?」と不安になる方も多いでしょう。
ここでは、公務員の有給消化の現状や、なぜ“全部消化”が難しいのか、その背景や悩みについて詳しく解説します。
公務員の有給休暇制度とは?基本ルールと年間日数の解説
公務員の有給休暇(年次有給休暇)は、法律(第17条の2)や条例に基づき、毎年一定の日数が付与されます。
多くの自治体や官庁では、1年目は15日、2年目以降は20日が付与されるのが一般的です。
付与のタイミングは1月1日または4月1日が多く、未消化分は最大20日まで翌年に繰り越し可能です。
ただし、繰り越し分を含めても最大40日までしか保有できません。
この制度は民間企業と似ていますが、細かな運用ルールや取得方法に違いがあるため、しっかり確認しておくことが大切です。
あわせて読みたいe-Gov 法令検索 電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。引用元 e-eon
・付与タイミングは1月または4月
・未消化分は最大20日まで翌年に繰り越し可能
・合計最大40日まで保有可能

付与日数 | 繰り越し上限 | 付与タイミング |
---|---|---|
1年目:15日 2年目以降:20日 |
20日(最大40日保有) | 1月1日または4月1日 |
国家公務員・地方公務員の有給取得率と民間企業との違い
公務員の有給取得率は、国家公務員・地方公務員ともに70~80%程度といわれています。
これは民間企業の平均取得率(約60%前後)よりも高い傾向にありますが、部署や職種によって大きな差があるのも特徴です。
たとえば、自治体によっては平均取得日数が19日を超えるところもあれば、10日程度にとどまる職場もあります。
民間企業と比べて制度は整っていますが、実際の取得状況にはバラつきがあるのが現状です。
令和6年国家公務員の有給休暇取得率
https://www.jinji.go.jp/seisaku/kankoku/archive/kokkou/06kokkou.html
地方公務員の有給休暇消化率
https://www.soumu.go.jp/main_content/000919478.pdf
区分 | 平均取得率 | 平均取得日数 |
---|---|---|
国家公務員 | 約75% | 11~15日 |
地方公務員 | 約80% | 11~19日 |
民間企業 | 約60% | 9~10日 |
僕の公務員時代は有給を10日以上消化している人はごく稀でしたね。
現在民間で勤めていますが僕の会社では消化率100%です。
正直業務内容にもよるということを考慮した方がいいです。



なぜ有給を全部消化できない?主な理由と現場の声
有給休暇をすべて消化できない理由はさまざまです。
一番多いのは「人手不足」や「業務の繁忙」で、休むと同僚に負担がかかるため遠慮してしまうケースが目立ちます。
また、上司や職場の雰囲気が「有給は取りにくい」と感じさせる場合も多く、特に年度末や繁忙期は取得しづらい傾向があります。
現場の声としては「休みたいけど言い出しにくい」「退職時にまとめて取ろうとしたら拒否された」など、制度と実態のギャップに悩む人が多いのが現状です。
・同僚への配慮や遠慮
・上司や職場の雰囲気
・繁忙期・年度末の取得困難
・退職時のトラブル



公務員の有給消化を阻む要因と“拒否”の実態
公務員が有給休暇を思うように消化できない背景には、制度上の問題だけでなく、現場特有の文化や慣習も大きく影響しています。
特に「有給消化の拒否」や「取得しづらい雰囲気」は、法律や規則だけでは解決しきれない現実的な課題です。
ここでは、有給消化を阻む主な要因や、実際に拒否されるケース、現場で起こりがちなトラブルについて詳しく解説します。
公務員ならではの悩みや、民間企業との違いも踏まえて、実態を明らかにします。
有給消化拒否は許される?法律・労働基準法と公務員独自の決まり
有給休暇の取得は労働基準法で認められた権利ですが、公務員の場合は国家公務員法や地方公務員法、各自治体の条例など独自のルールも存在します。
原則として、正当な理由がなければ有給取得の拒否はできませんが、業務の正常な運営に支障が出る場合は時季変更権が認められています。
ただし、退職時のまとめ取りや繁忙期の取得については、現場の判断で拒否されることもあり、トラブルの原因となっています。
・公務員は独自の条例や規則も適用
・業務に支障がある場合は時季変更権あり
・正当な理由なく拒否はできない
上司や部署の対応・職場の雰囲気による影響
有給取得のしやすさは、上司や部署の考え方、職場の雰囲気に大きく左右されます。
「有給は取って当たり前」と考える職場もあれば、「みんな我慢しているから…」と取得を遠慮しがちな職場も存在します。
特に、上司が有給取得に消極的だったり、前例が少ない場合は、申請しづらい空気が生まれやすいです。
こうした雰囲気が、有給消化率の地域差や部署差を生み出す大きな要因となっています。
・部署ごとの業務量や人員配置
・前例や慣習の有無
・同僚との関係性



繁忙期・年度末・退職時の有給取得とトラブル例
公務員の有給取得で特にトラブルが多いのが、繁忙期や年度末、そして退職時です。
「この時期は休まないでほしい」と言われたり、退職前にまとめて有給を申請したら「業務に支障が出る」と拒否されるケースもあります。
また、引き継ぎが不十分なまま休暇に入ることで、職場内で不満が生じることも。
こうしたトラブルを避けるためには、早めの相談や計画的な取得が重要です。
時期 | よくあるトラブル |
---|---|
繁忙期 | 取得を遠慮・拒否される |
年度末 | 引き継ぎ不足・業務停滞 |
退職時 | まとめ取りの拒否・手続き遅延 |



退職・転職時の有給消化問題:できない場合・買取・繰り越しの現場
退職や転職を控えた公務員にとって、有給休暇の消化は大きな関心事です。
「退職前に全部消化できるのか」「消化できなかった分は買い取ってもらえるのか」「翌年に繰り越せるのか」など、さまざまな疑問や不安が生じます。
実際には、退職時の有給消化には独自のルールや注意点があり、民間企業とは異なる点も多いです。
ここでは、退職・転職時の有給消化の現場と、よくあるトラブルや対策について詳しく解説します。
退職時の有給消化は拒否される?必要な書類と手続き
退職時に有給休暇をまとめて消化することは原則として認められていますが、業務の引き継ぎや人員配置の都合で拒否されるケースもあります。
スムーズに消化するためには、退職日や有給消化期間を早めに上司と相談し、必要な書類(退職届や有給申請書)を正しく提出することが重要です。
また、自治体や職場によって手続きの流れが異なるため、事前に確認しておきましょう。
・退職届・有給申請書の提出
・引き継ぎ計画の作成
・職場ごとの手続き確認



有給消化できない場合の有給買取・繰り越しの可否
公務員の場合、原則として有給休暇の買取制度はありません。
消化できなかった有給は、翌年に最大20日まで繰り越せますが、退職時は繰り越しもできず、未消化分は消滅します。
民間企業では一部買取制度がある場合もありますが、公務員は「使い切る」ことが基本となるため、計画的な取得が重要です。
状況 | 有給買取 | 繰り越し |
---|---|---|
通常時 | 不可 | 最大20日まで翌年繰り越し可 |
退職時 | 不可 | 不可(未消化分は消滅) |
転職予定者に多い失敗例とスムーズな取得のポイント
転職予定の公務員が有給消化で失敗しやすいのは、「退職直前にまとめて申請したら拒否された」「引き継ぎが不十分でトラブルになった」などのケースです。
スムーズに有給を取得するには、転職先の入社日と退職日を調整し、早めに上司や同僚と相談することが大切です。
また、引き継ぎ資料をしっかり作成し、職場の理解を得ることで、トラブルを防ぐことができます。
・引き継ぎ計画の明確化
・上司・同僚との事前相談
・有給申請は早めに行う



有給消化の義務・新ルール:5日取得は必須?残りはどうなる
近年、年次有給休暇の取得促進を目的に「年5日取得義務」が導入されました。
このルールは民間企業だけでなく、公務員にも一部適用されています。
しかし、5日を超える有給の取得や、残りの有給の扱いについては、職場ごとに運用が異なる場合もあります。
ここでは、5日取得義務の内容や公務員への適用範囲、残りの有給の取り扱いについて詳しく解説します。
有給の「取りすぎ」や繰り越しの条件など、法律上の注意点も押さえておきましょう。
年次有給休暇5日取得義務とは?公務員への適用範囲
2019年4月から施行された「年5日取得義務」は、年10日以上の有給が付与される労働者に対し、年5日以上の取得を義務付けるものです。
国家公務員や地方公務員にも、基本的にはこのルールが適用されますが、一部の特殊な職種や非常勤職員などは対象外となる場合もあります。
取得義務を守らない場合、管理職や組織に対して指導や勧告が行われることもあるため、職場全体での意識改革が進められています。
- 年10日以上付与される職員が対象
- 国家・地方公務員も原則適用
- 一部非常勤や特殊職は対象外
- 取得義務違反は組織への指導対象
有給の“取りすぎ”は問題か?支給や付与タイミング・法律上の注意点
有給休暇は付与された範囲内であれば、何日取得しても法律上問題ありません。
ただし、付与日数を超えて取得することはできず、また、年度ごとに付与・繰り越しのタイミングが決まっています。
「取りすぎ」と指摘されるのは、職場の業務に大きな支障が出る場合や、取得理由が不適切と判断された場合です。
法律上は、正当な理由がなければ取得を拒否できないため、計画的な取得と職場との調整が重要です。
項目 | 注意点 |
---|---|
付与日数 | 年度ごとに決定、超過取得は不可 |
取得理由 | 原則自由、業務支障時は時季変更権あり |
繰り越し | 最大20日まで翌年に繰り越し可 |
有給が翌年に繰り越せる条件と最大日数
公務員の有給休暇は、消化しきれなかった分を翌年に最大20日まで繰り越すことができます。
たとえば、今年10日しか使わなかった場合、翌年は新たに付与される20日と合わせて最大30日保有可能です。
ただし、繰り越し分を含めても合計40日が上限となり、それを超えた分は消滅します。
このため、毎年計画的に取得しないと、せっかくの有給が無駄になってしまうこともあるので注意が必要です。
・合計保有上限は40日
・上限超過分は消滅
・計画的な取得が重要
具体的な有給消化の進め方と安心して取得するためのコツ
有給休暇をしっかり消化するためには、制度の理解だけでなく、実際の申請方法や職場との調整も大切です。
ここでは、有給取得の希望を伝えるタイミングや申請方法、部署や業務状況を踏まえた調整術、安心して休暇を取るためのポイントを具体的に紹介します。
よくある質問やトラブルへの対処法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
有給取得の希望を上司に伝えるベストなタイミングと書類申請法
有給休暇を取得したい場合は、できるだけ早めに上司へ相談するのがベストです。
特に繁忙期や他の職員と重なる時期は、1~2か月前から希望日を伝えておくとスムーズです。
申請方法は、口頭での相談後に所定の申請書やシステムで正式に申請するのが一般的です。
職場ごとのルールやフォーマットを事前に確認し、必要な手続きを漏れなく行いましょう。
・繁忙期は1~2か月前が理想
・口頭相談+書類やシステムで申請
・職場ルールの確認を忘れずに
部署や業務状況を踏まえた有給取得のコツと周囲との調整術
有給取得の際は、部署の業務状況や同僚の予定も考慮することが大切です。
自分の担当業務の進捗や引き継ぎ内容を整理し、同僚と事前に情報共有しておくと、安心して休暇を取ることができます。
また、繁忙期やイベント時期を避けて申請する、他の職員と取得日が重ならないよう調整するなど、周囲への配慮も忘れずに行いましょう。
・同僚と情報共有・調整
・繁忙期やイベント時期を避ける
・取得日が重ならないよう配慮
安心して休暇を取るためのポイント・よくある質問FAQ
有給休暇を安心して取得するためには、職場のルールや制度をしっかり理解し、周囲と良好なコミュニケーションを取ることが大切です。
よくある質問として「理由は必要?」「急な取得はできる?」「拒否されたらどうする?」などがありますが、原則として理由は不要で、急な取得も可能です。
もし拒否された場合は、労働組合や人事担当に相談するのも一つの方法です。
・急な取得も可能(業務に支障がなければ)
・拒否された場合は相談窓口を活用
・制度やルールを事前に確認
まとめ:公務員が納得・安心できる有給消化のためにできること
公務員の有給休暇は、法律や制度でしっかり守られた権利です。
しかし、現場の雰囲気や業務の都合で「全部消化」は簡単ではありません。
納得して有給を活用するためには、制度の正しい理解と、職場との円滑なコミュニケーション、計画的な取得が不可欠です。
困ったときは一人で悩まず、上司や人事、労働組合などに相談し、安心して休暇を取得できる環境づくりを心がけましょう。
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